先日、2008年8月20日発行の文春新書652『不許可写真』草森紳一著を購入して読んだのですが、ここまで酷い物書きは久しぶりで、同じ本を誤って二冊買ってしまった時異常の無駄遣い感に陥りましたよ。
以前買った
平凡社新書403『南京事件論争史』笠原十九司著以来ですね、ここまで酷いのは。
『不許可写真』の前に今一度『南京事件論争史』について今一度書きましょう。
「明白な真実がなぜ問題とされるのか。否定派のトリックを衝く、「論争」の全経過。」なんてご大層な帯書きの本なのですが、内容は肯定派によるトリックと言い訳、肯定派への口汚い罵りと低俗極まりないものです。
例えばあのアイリス・チャンについては
「歴史家でもなく、日本語はもちろん中国語の資料も十分に読みこなせないため、記述にも誤りもあり、写真にも誤りがあった」と、一般人だから誤りは仕方ないんだという擁護をしていますが、自身がかつて岩波から発行した『南京事件』においてろくに満足な検証もせずに掲載して足元を救われた「日本兵に拉致される江南地方の
中国人女性たち」という写真。
元々オリジナルは
アサヒグラフに昭和12年掲載の「我が兵士に護られて野良仕事より部落へかへる日の丸部落の女子供の群」という兵士と女性が笑顔で橋を渡っている写真なのですが、引用元ではそう(上記『南京事件』の)キャプションが付いており、写真自体も
顔がぼかされたり、女性の引く綿車が消去されたりと『日寇暴行実録』に載っていた段階でなっていたんだそうですけど、これをアイリス・チャンが同じ写真を引用して
「日本軍は、何千という女たちを家畜のように追い立てた。彼女たちの多くは、集団強姦されるか、軍用売春を強要された」とキャプションを付けており、言葉が読めないとかそういう次元ですらない極めて悪質な歪曲を平然と行い、アメリカ人はそれに感化されてその本を真実だと思い込んで一昨年まで騒いでいたんですけど、それって、一般人による単なる誤りで片付けられるような矮小で簡単な問題でしょうかねぇ?
それで、何でわざわざ今一度こんな話を先に書いたかというと、実は今回書く『不許可写真』ってのはまさにその歴史家でもない一般人作家の本であり、これまた異なったイカサマ手法による日本軍の非道の喧伝が随所に記されているからです。
まず、一番呆れたのが
30Pの「いかにそのシルエットが、のどかに操作されようとも、第10軍の兵士たちのたかぶる心は、大目的をもって前へ前へと進んでいたのだ。もちろん、目指すは「南京陥落」。そして部隊間の一番乗りの競合。目の前にぶらさがる紅いニンジンは、「略奪強姦勝手次第」。そういう暗黙の了解(古代からの戦争のしきたりである)を兵たちは上司からえられていたという。」と記された部分で、
「暗黙の了解」なのに「上司から(許可を)えていたという」なんて意味不明かつ、何の証拠も無い曖昧な伝聞を平然と書いています。
しかし、第10軍に関しては杭州上陸に際して参謀長からの注意事項が通達されており、そこには
軍規を厳粛に保てというものから始まる16の項目があって、この後の4ヶ月で殺人で29人、強姦で21人が処分(強姦殺人による重複あり)をされています(その時点でまだ処分されていない逮捕者も当然います)。
略奪強姦勝手次第のはずの部隊であるなら、何でこんな通達が参謀長から出され、実際に逮捕・処罰者が存在するのだろうって話になりません?
戦争に性犯罪や殺人事件は付き物ですが、それが軍の認可の下行われていたのか否かというのは国家の品格にも通じる重要な問題であり、このように伝聞と憶測で平然と自国を貶められる神経って本当に理解に苦しみます。
更にこの後、慰安婦に関する話では土金富之助なんてはぐれメタルよりも遥かにレアな作家の本(『シンガポールへの道』)を持ち出して、
従軍看護婦、女子挺身隊、女子勤労奉仕隊という名目で8万人を狩り出したなんて記し、更には「(慰安所規定の写真を指して)この張り紙には、「従軍慰安婦」の語はなく、「酌婦」としている」なんて不満を書いている始末です。
そも今時
『従軍慰安婦』という言葉が当時存在しなかったという基本すら知らず、おまけに昭和13年の生まれとプロフィールを出しておきながら
『酌婦』の意味すら知らない(ここでは接客だけでなく売春もする女性を指す言葉で辞書にも載っている)無知さで的外れな指摘をしているんですから…
肝心の写真に関する説明も完全に筆者の手前勝手な妄想で騙られており、客観的資料を付き合わせた上での説明じゃない為、今さっき書いたように出鱈目が終始続きます。
例えば
戦争映画に慰安婦の大半が朝鮮の女性だったと書いていない、日本兵の強姦の話が出てこないと不満を洩らしたり、それに関する情報提供者が自分がやったとは言わず、間接的に語ったり、一般論に逸らしていると
自分が同書内で散々用いている手法を棚に上げて他人を非難したり、年の割りに非常に幼く、手前勝手という印象を受けます。
この著者、常に情報の肝心な部分で裏取りをしておらず、自分の独断と偏見で適当な事を書いてはその後に指摘されても言い逃れで切るような逃げを用意してばかりおり、本として、情報ソースとしての価値が全くありません。
掲載されている写真自体も毎日が発行した不許可写真からそのまま持ってきただけのものなので、古くて入手がし辛いのと大きいという点を除けば、そちらの本を入手した方が遥かに価値があります。
大判なので写真も大きく掲載されていますし、見開きで二枚に分けられていて見難いなんて事もありませんからね。
ホント、この手の本は内容を十分に調べて買わないと痛い目にあいますね。